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婦人科で漢方は処方してもらえる?|代表的な漢方薬と受診の流れ
月経前後の不調や更年期症状、冷え、むくみなどの症状で「婦人科で漢方薬を処方してもらえるのだろうか」と調べている方もいるのではないでしょうか?
市販の漢方薬もありますが、医療機関では症状の現れ方や続いている期間、体調、生活背景などを踏まえて治療方針を組み立てます。月経痛が中心となる場合もあれば、冷えやむくみ、不眠、気分の変化など、複数の不調が重なることもあります。こうした症状を幅広く確認しながら、その方の状態に合わせて処方を検討するのが、婦人科で行う漢方診療です。
当院では現在、医療用漢方エキス製剤を処方しています。煎じ薬や丸剤などの処方には対応しておりませんので、あらかじめご了承ください。
この記事では、漢方薬が用いられる主な不調をはじめ、代表的な処方、薬を選ぶ際の視点、副作用や飲み合わせの注意点まで解説します。
目次
婦人科ではどのような不調に漢方薬を処方する?
婦人科で漢方薬を用いる場面は、月経や更年期に関する悩みだけではありません。
冷え、むくみ、不眠、慢性的な疲労感などが婦人科症状と重なっている場合にも、診察で得られた情報をもとに治療方法を整えていきます。
月経痛・月経不順
月経中の痛みが強い、鎮痛薬を飲んでも生活に支障がある、月経周期が安定しないといった悩みに対して、漢方薬が用いられることがあります。
ただし、強い月経痛には、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症などが関係している場合もあります。漢方薬を選ぶ前に、問診や必要な検査を通して、痛みの背景に病気が隠れていないかを調べることも診療の一部です。当院婦人科では、月経困難症の状態に応じて、漢方薬のほか、鎮痛薬、低用量ピル、黄体ホルモン製剤などもご提案しています。
月経不順についても、周期の長さだけで処方が決まるわけではありません。出血の続き方や体調の変化、冷え、疲労感などを整理しながら、治療の方向性を決めていきます。
PMS(月経前症候群)
PMSは、月経前に心身の不調が現れ、月経が始まると軽くなる状態です。
イライラや気分の落ち込みといった精神面の変化だけでなく、むくみ・頭痛・だるさ・眠りにくさなどを伴うこともあります。
現れる症状の組み合わせや強さは人によって異なるため、PMSという診断名だけで一つの漢方薬を当てはめることはできません。月経周期との関係や、どの不調が生活に強く影響しているのかを伺い、それぞれの状態に合う処方を探していくことになります。
漢方薬を中心に進めることもあれば、低用量ピルや黄体ホルモン製剤などを取り入れる場合もあります。どの方法を用いるかは、症状の内容やご本人の希望を踏まえて決まります。
更年期症状
更年期には、ほてりや発汗、冷え、動悸、疲れ、睡眠の乱れ、気分の変化など、複数の不調が重なって現れることがあります。症状が一つに限られないため、全体の様子を見ながら薬を選ぶ漢方治療が用いられています。
更年期障害に対する代表的な処方として挙げられるのが、当帰芍薬散・加味逍遙散・桂枝茯苓丸です。
これらは「女性の三大漢方薬」と呼ばれることもありますが、誰にでも同じように使うものではありません。冷えやむくみが目立つのか、のぼせを伴うのか、気分の変化が強いのかなどを踏まえて、その人の体調に合う処方を選びます。
冷え・むくみ・不眠・疲労感など
月経や更年期との関係がはっきりしない不調でも、女性漢方外来の診療対象になる場合があります。
例えば、手足の冷えとむくみが続いている、寝つきが悪く疲れが取れない、頭痛や肩こりも重なっているといったケースです。
一つひとつは軽く見えても、症状が続けば、日常生活への負担は大きくなります。
検査では明らかな異常を指摘されなかったものの、不調が続いている方も受診ができます。
必要に応じて採血や超音波検査を行い、別の専門的な診療が必要と判断した場合には、適切な診療科や医療機関へおつなぎします。
婦人科で処方される代表的な漢方薬
婦人科領域では、さまざまな漢方薬が使われています。
ここでは月経痛・月経不順・PMS・更年期の症状などで取り上げられることの多い4つの処方をご紹介します。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
当帰芍薬散は、月経不順・月経痛・更年期症状などに用いられる代表的な漢方薬です。
冷えやむくみ、めまい、肩こり、疲れやすさなどを伴う場合に処方されることがあります。
婦人科では、月経に関する悩みだけでなく、体の冷え方や水分の偏りを思わせる症状なども含めて処方を考えます。単に「冷えがあるから当帰芍薬散」と決めるのではなく、ほかの症状や胃腸の様子、服用中の薬なども確認します。
処方後は月経痛やむくみがどう変わったか、体調に新たな変化がないかを診察で確認しながら、その後の方針を決定していきます。
加味逍遙散(かみしょうようさん)
加味逍遙散は、月経不順・月経困難・更年期障害・冷え・不眠などに用いられます。
疲れや肩こりに加え、イライラや不安感など、心身の不調が重なっている場合に選ばれることがあります。
月経前や更年期には、体の症状と気分の変化が同時に現れることも珍しくありません。そのような場面でも精神面だけに注目せず、睡眠、食欲、便通、冷えなどを含めて診察します。
加味逍遙散には甘草や山梔子などの生薬が含まれているため、ほかの漢方薬との重複や長期服用時の安全性にも目を配りながら経過を見ます。
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
桂枝茯苓丸は、月経不順・月経痛・更年期障害などに使われる漢方薬です。
のぼせる一方で足が冷える、下腹部痛、肩こり、頭重感、めまいなどを伴う場合が、処方を考える際の手がかりになります。
当帰芍薬散や加味逍遙散と同じく、婦人科でよく知られている処方で、体調や症状の組み合わせを見ながら、現在の状態に合うかを判断していきます。
なお、妊娠中や妊娠の可能性がある場合には使用上の注意があるため、受診時にその可能性を伝えるようにしましょう。
芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)
芍薬甘草湯は、急に起こる筋肉のけいれんを伴う痛みや腹痛などに用いられる漢方薬です。
月経困難症では、けいれんするような強い痛みに対し、頓服として使う場合があります。
当帰芍薬散・加味逍遙散・桂枝茯苓丸などが、症状や体調を見ながら継続的に使われることがあるのに対し、芍薬甘草湯は急な痛みへの対応として処方されるケースがあります。
ただ、甘草を含むため、長期にわたる連用や、ほかの甘草含有製剤との重複には注意が必要です。必要な期間や服用方法については、処方時の指示に従ってください。
婦人科では漢方薬をどのように選んで処方する?
同じ月経痛や更年期症状でも、現れ方や強さ、あわせて起きている不調は一人ひとり異なります。
婦人科では主な症状だけに注目せず、月経周期との関係や体調の変化、生活背景まで含めて診察します。
処方を決める際には、冷えやむくみ、睡眠、疲労感なども手がかりになります。
ここでは、婦人科や女性漢方外来でどのような点を確認しながら漢方薬を選ぶのか、見ていきましょう。
症状の種類と現れる時期を整理する
診察では、いつから不調が続いているのか、月経周期と関係があるのか、どの症状が特に辛いのかを伺います。
月経前だけに現れるのか、月経中に強くなるのか、更年期に入ってから続いているのかによって、考えるべき背景は異なります。月経痛であれば、痛みが始まる時期や続く日数、鎮痛薬の使用状況なども手がかりになります。
普段から月経周期や不調が現れた日、生活への影響を簡単に記録しておくのも良いでしょう。
体調や生活背景を踏まえて処方する
漢方診療では、目立つ一つの症状だけでなく、冷え・むくみ・食欲・睡眠・便通・疲労感なども伺います。仕事や家事による負担、生活リズムなどが体調と関係している場合もあるためです。
同じ更年期症状でも、ほてりが中心の方と、不眠や気分の変化が強い方では、処方も変わってきます。いくつかの情報を組み合わせ、現在の体調に合う薬を探ります。
当院の女性漢方外来では、婦人科専門医としての診療に漢方医学の視点を加え、体質や生活背景を踏まえながら治療方針を組み立てています。
ほかの婦人科治療と使い分ける
婦人科の不調に対する治療は、漢方薬だけではありません。月経痛やPMSでは、鎮痛薬や低用量ピル、黄体ホルモン製剤なども候補になります。
痛みが強く、子宮内膜症などの病気が疑われる場合には、原因に応じた治療を優先します。一方で、複数の不調が重なっている場合や、ほかの薬を使いにくい事情がある場合などに、漢方薬を取り入れることがあります。
どの治療を単独で用いるか、あるいは組み合わせるかは、症状・診察結果・ご本人の希望などを踏まえて決まります。当院婦人科でも、月経困難症やPMSに対して複数の治療法を提案しています。
婦人科で漢方薬の処方を受ける前に知っておきたい注意点
漢方薬は植物などを由来とする生薬から作られていますが、医薬品であることに変わりはありません。体に合わない場合や、同じ生薬を含む製剤を重ねて服用した場合には、副作用が生じる可能性があります。
安全に服用するためには、診察時に現在使っている薬を正確に伝え、処方後の体調変化も見ていくことが欠かせません。
漢方薬にも副作用がある
漢方薬には副作用がないと思われることがありますが、処方によっては注意が必要です。
甘草を含む漢方薬では、偽アルドステロン症が起こる場合があります。
血圧の上昇、むくみ、体重の増加、筋力の低下やけいれんなどが現れることがあるため、異変を感じた際は、すぐに医師へ相談してください。
加味逍遙散などに含まれる山梔子についても、長期服用に関連した腸間膜静脈硬化症が報告されています。
全ての方にこうした副作用が起こるわけではありませんが、「自然由来だから長く飲み続けても安全」と自己判断するのは避けてください。
服用中の体調を見ながら、継続するか、処方を見直すかは診察で判断します。
市販薬や他院の処方薬との重複に注意する
複数の漢方薬を使用すると、同じ生薬を重ねて摂取してしまうことがあります。
特に甘草などは、婦人科以外で処方された漢方薬や市販の風邪薬などにも含まれている場合もあります。
診察時には、他院から処方されている薬、市販の漢方薬、サプリメントを含め、現在使用しているものをお伝えください。お薬手帳や商品の名称が分かる写真、パッケージなどがあれば、成分の重複を把握しやすくなります。
自己判断で処方を変えない
漢方薬は、長く服用しなければ効かないとは限りません。
芍薬甘草湯のように急な痛みに用いる処方もあれば、体調の変化を見ながら一定期間服用するものもあります。
効果を急いで量を増やしたり、別の漢方薬を追加したりすると、生薬が重複する可能性があります。また、症状が変化しているのに同じ処方を続けることが適切とは限りません。
服用を始めてから、どの症状がどう変わったか、飲みにくさや体調の変化がなかったかを診察時に伝え、医師に相談するようにしてください。
婦人科で処方される漢方薬は保険適用になる?
医療機関では、診察を受けたうえで医療用漢方製剤が処方されます。保険診療の対象となる症状や処方であれば、健康保険が適用されます。
東京Dタワーホスピタルの女性漢方外来は、保険診療として開設しています。
ただし、どのような相談や薬でも一律に保険が適用されるわけではなく、診察内容や処方される医薬品に基づいて扱いが決まります。
医療機関の処方と市販の漢方薬の違い
市販の漢方薬は、ドラッグストアや薬局などで自分で商品を選び、購入できます。
一方、医療機関では、症状や経過、ほかの薬の使用状況などを診察で確かめてから、医療用漢方製剤を処方します。
同じ処方名の商品でも、医療用と市販薬では含まれるエキス量や用法が異なる場合があります。そのため、名称が同じという理由だけで、手元にある薬へ置き換えることはできません。
市販薬を使っても不調が続いている場合や、どの薬を選べばよいか迷っている場合は、自己判断で種類を増やす前に、婦人科や漢方外来で症状を相談してください。
東京Dタワーホスピタルの婦人科・女性漢方外来
東京Dタワーホスピタルでは、木曜日の婦人科外来で、産婦人科専門医であり漢方専門医でもある医師が女性漢方外来を担当しています。完全予約制の保険診療で、月経痛や月経不順、PMS、更年期症状に加え、冷え性、むくみ、不眠、慢性的な疲労感など、女性特有のさまざまな不調についてご相談いただけます。
症状に応じて採血や超音波検査を行い、婦人科と漢方医学の両面から現在の状態を確認します。さらに専門的な検査や治療が必要と判断した場合には、適切な診療科や医療機関をご案内します。
婦人科と漢方医学の両面から診療する
月経痛や月経不順では、まず婦人科疾患が関係していないかを見極める必要があります。
診察や検査で原因を探りながら、漢方医学の視点も取り入れ、現在の体調や生活背景に沿った治療を組み立てます。
「どの診療科を受診すればよいか分からない」「検査で異常はないと言われたが不調が続いている」といった場合もまずはご相談ください。
女性漢方外来の予約方法
当院の女性漢方外来は完全予約制です。
受診を希望される方は、ホームページの予約フォームまたはお電話からご予約ください。
初診では、現在の症状やこれまでの治療歴を伺い、必要に応じて診察や検査を行います。服用中の薬がある場合は、お薬手帳や薬の名称が分かるものをご持参ください。
まとめ
婦人科では、月経痛、月経不順、PMS、更年期症状などに対し、漢方薬を治療へ取り入れることがあります。当帰芍薬散・加味逍遙散・桂枝茯苓丸は代表的な処方であり、月経時のけいれんするような痛みに芍薬甘草湯を用いる場合もあります。
ただし、漢方薬にも副作用や生薬の重複によるリスクがあるため、市販薬を含めた服用状況を医師へ伝え、経過を見ながら使用することが基本です。
月経や更年期に伴う不調が続いている方、婦人科で漢方薬の処方を受けたい方は、一度東京Dタワーホスピタルの婦人科・女性漢方外来へご相談ください。
※当院では現在、医療用漢方エキス製剤を処方しています。煎じ薬や丸剤などの処方には対応しておりませんので、あらかじめご了承ください。
この記事を書いた人
齋藤 絵美
Emi Saito
【専門分野】婦人科、女性漢方、月経・更年期診療
山口大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学付属病院、深谷赤十字病院、東京慈恵医科大学付属柏病院などで産婦人科診療に従事。その後、北里研究所東洋医学研究所(現・北里大学)で漢方医学を専門的に研鑚。産婦人科診療を継続しながら、長年にわたり婦人科診療と漢方診療の両分野で経験を積む。2026年より東京Dタワーホスピタル婦人科に勤務。
日本産婦人科学会認定 産婦人科専門医
日本東洋医学会認定 漢方専門医

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