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脳神経外科

ケサンラとは?認知症治療薬の特徴・対象・注意点を解説

Author :脳神経外科 白土 充

「最近もの忘れが増えてきた気がする」
「家族の様子が少し気になる」
「認知症と診断される前に、できることはあるのだろうか」

こうした思いから情報を探している方もいるのではないでしょうか?

認知症の治療は、これまで「今ある症状を和らげること」が中心でしたが、近年は病気の進み方そのものに着目した新しい治療薬も登場しています。その一つがケサンラです。

ただ、新しい治療薬と聞くと「どんな薬なのか」「誰が対象になるのか」「本当に自分や家族に関係があるのか」と不安や疑問を持つ方もいると思います。

この記事では、ケサンラとは何か、認知症の治療薬としてどう位置づけられるのか、どのような方が対象になるのか、レケンビとの違いを、わかりやすく解説していきます。

ケサンラとは?認知症の新しい治療薬

認知症の新しい治療薬として、近年注目されている治療薬の1つがケサンラです。
まずは、この薬がどのような位置づけの治療薬なのかを整理しておきましょう。

ケサンラと従来の認知症治療薬の違い

ケサンラは、アルツハイマー病の原因の一つと考えられているアミロイドβに働きかける治療薬です。
これまでの認知症治療薬の多くは記憶力や注意力の低下など、今ある症状をやわらげることを主な目的としてきました。

それに対してケサンラは、脳の中にたまったアミロイドβに結合し、それを減らすことで、病気の進行をゆるやかにすることが期待される薬です。
つまり、「症状を抑える薬」というより「病気の進み方そのものに働きかける薬」と考えるとわかりやすいでしょう。

もちろん、認知症を治す薬というわけではありません。しかし、早い段階で治療を始めることで、今の状態を少しでも長く保つことを目指せる点が、この薬の大きな特徴です。

ケサンラが対象となる認知症の段階

ケサンラは、すべての認知症の方に使える薬ではありません。
主に対象となるのはアルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)、または軽度の認知症の方です。

ここでいうMCIとは、もの忘れなどの変化はあるものの、まだ認知症とまではいえない前段階の状態を指します。
日常生活はある程度保たれていても「以前より記憶があいまいになった」「家族から変化を指摘されることが増えた」といったサインが見られることがあります。

一方で、中等度以上に進行した認知症に広く用いられる薬ではないため、ケサンラは「認知症全般に使う新薬」ではなく、早期アルツハイマー病に対して検討される治療薬として認識しておきましょう。

ケサンラに期待されることと限界

この薬の目的は、認知機能や日常生活機能の低下をゆるやかにすることです。
ご本人にとっても、ご家族にとっても、「進行を遅らせる」という意味は決して小さくありません。

一方で、効果のあらわれ方には個人差がありますし、すべての方に同じような変化が見られるわけではありません。
新しい薬だからこそ、過度に期待しすぎず、期待できることと限界の両方を理解したうえで向き合うことが大切です。

ケサンラはどんな人が治療対象になる?

「自分や家族は対象になるのだろうか」と気になる方も多いと思います。ここでは、治療の対象となる方についてご説明します。

MCI(軽度認知障害)や軽度認知症の方

ケサンラの対象として考えられるのは、アルツハイマー病によるMCI、または軽度認知症の方です。
まだ比較的早い段階であることが前提になるため、「最近少し気になる」「軽い段階のうちに相談したい」という方にとって重要な選択肢になり得ます。

この時期は、本人も家族も受診のタイミングに迷いやすい時期です。
日常生活がある程度できていると「まだ大丈夫かもしれない」と思ってしまうこともあります。しかし、新しい治療薬の適応を考えるうえでは、こうした早い段階での診断が大切になります。

アミロイドβの蓄積確認が必要になる理由

ケサンラは、アミロイドβに働きかける薬です。そのため、治療を検討する前に、脳の中にアミロイドβが蓄積しているかどうかを確認する必要があります。
アルツハイマー病以外の原因で認知機能が低下していることもあるため、まずは背景を正しく見極めることが大切です。

認知機能の評価だけでなく、MRIや髄液検査、アミロイドPET検査などを組み合わせて、治療の対象になるかどうかを慎重に判断していきます。

すべての物忘れに使える薬ではない

物忘れは、加齢の変化だけでなく、睡眠不足、ストレス、うつ状態、ほかの脳の病気や体の病気などさまざまな原因で起こります。したがって、「もの忘れがある=すぐケサンラの対象」というわけではありません。

ケサンラはあくまでアルツハイマー病による早期の認知機能低下に対して検討される薬です。症状だけで自己判断するのではなく、専門医による診察と必要な検査を受けたうえで、適応を見極めることが大切です。

薬を急いで求めるのではなく、まず原因を整理することが第一歩です。

ケサンラ治療の前に必要な検査

ケサンラ治療を考える前には、いくつかの検査が必要になります。ここでは必要な検査についてご紹介します。

認知機能検査・問診・画像検査

最初の段階では、問診や診察を通して、現在の症状や日常生活への影響を確認します。
本人だけでなく、ご家族など日常の様子を知る方からの情報も大切になることがあります。

その上で、認知機能検査・MRI・血液検査などを行い、今の状態を多角的に分析します。ここでの目的は、単に認知機能の低下があるかどうかを見るだけではなく、その背景にある原因を整理することです。

アミロイドPET検査・髄液検査の役割

ケサンラが対象となるかどうかを最終的に判断する上で、脳の中のアミロイドβの蓄積を確認する検査が重要になります。
そのために用いられるのが、アミロイドPET検査や髄液検査です。

アミロイドPET検査は脳内のアミロイドβの蓄積を画像で確認する検査です。一方、髄液検査は腰椎穿刺で髄液を採取し、その成分を調べることでアルツハイマー病の病理を推定する方法です。

どちらの検査が適しているかは、施設の体制や患者さんの状況によって異なりますが、いずれも「治療を始めてよいかどうか」を判断する大切なステップになります。

治療前にMRI確認が必要な理由

MRIは診断の補助だけでなく、安全性の確認という意味でも重要です。特に、ケサンラのような薬では治療前から脳の状態を把握しておくことが求められます。

その理由の一つが、後で説明するARIAという副作用です。
治療前の段階で、もともと注意すべき所見がないかを確認しておくことで、治療中の変化も追いやすくなります。

ケサンラの治療の流れ

実際にケサンラ治療を考える場合、どのような流れで進むのかが見えると、不安も少し和らぎます。この章では、治療開始までの一般的な流れをご紹介します。

診察から適応判断までの流れ

最初は診察と問診から始まり、認知機能検査、MRI、血液検査などを行って現在の状態を確認します。その結果を踏まえて、さらにアミロイドPET検査や髄液検査が必要かどうかを判断します。

これらの検査を通じて、アルツハイマー病によるMCIまたは軽度認知症にあたるか、そしてケサンラ治療の対象となるかを総合的に見ていきます。
治療を始めるかどうかは、検査結果だけでなく、ご本人やご家族の希望も含めて相談しながら決めていきます。

点滴治療のスケジュール

ケサンラは飲み薬ではなく、点滴で行う治療です。
基本的には月1回の通院で治療を続けていきます。通院間隔がある程度決まっているため、ご本人の体調だけでなく、ご家族の付き添いや生活リズムも含めて考えることが大切です。

新しい治療薬というと薬そのものに目が向きがちですが、実際には「無理なく通えるか」という現実的な視点もとても重要です。通院頻度が生活に合っているかどうかは、治療を前向きに続けられるかに関わってきます。

効果だけでなく、治療の受けやすさや生活との両立も含めて相談しながら決めていくことが大切です。

治療中の経過観察

ケサンラ治療は、点滴を受けるだけではなく、MRIなどを使って、副作用の有無や脳の状態を定期的に確認しながら進めていきます。

これは、安全に治療を続けるために欠かせない流れです。特に、本人に症状がなくても画像上で変化が見つかることがあるため、定期的な確認が重要になります。

ケサンラの副作用と注意点

新しい治療薬については、効果とあわせて副作用も気になるところだと思います。この章では、不必要に不安をあおらず、でも大切なことはきちんと伝える形で整理します。

代表的な副作用「ARIA」とは

ケサンラのような薬では、ARIA(Amyloid Related Imaging Abnormalities)と呼ばれる副作用があります。
多くの場合、MRIで見つかることが多く、本人に自覚症状がないこともあります。

ただし、頭痛、吐き気、ふらつき、ぼんやりする感じなどの症状が出ることもあり、注意が必要です。

ケサンラとレケンビの違い

ケサンラと同じく、アルツハイマー病の治療に用いられる新しい薬にレケンビがあります。どちらも早期の認知症に対して使われる薬ですが、治療の進め方や通院頻度に違いがあります。ここでは、その違いを解説します。

共通点

ケサンラもレケンビも、どちらも抗アミロイドβ抗体薬です。
アルツハイマー病によるMCIや軽度認知症を対象として、病気の進行をゆるやかにすることが期待される点は共通しています。

また、どちらの薬も治療前に認知機能検査やMRI、アミロイドβの確認検査が必要であり、治療中も副作用の確認のためにMRIを行いながら進めます。
どちらも「早期の段階で、しっかり検査を受けたうえで使う薬」であることは同じです。

投与頻度や治療設計の違い

この2つの薬についてわかりやすい違いの一つが、通院頻度や治療設計です。
ケサンラは月1回の点滴が基本ですが、レケンビはそれより短い間隔で通院することになります。

通院のしやすさや、付き添いの都合、日常生活との両立は、治療を続けるうえでとても大切です。
治療薬の特徴を比べるときは、効果だけでなく、治療の受け方そのものも含めて考えましょう。

レケンビについて詳しくは下記の記事をご覧ください。

認知症の新薬レケンビ®(レカネマブ)とは?効果・検査・治療の流れを解説

ケサンラ治療薬はどんな人に向いている?

ケサンラは、すべての方に適応される薬ではありません。ここでは、どのような方が対象となりやすいかをご説明します。

最近もの忘れが気になり始めた方

「まだ病院に行くほどではないかもしれない」と感じる段階でも、もの忘れが増えたと感じるなら、一度ご相談ください。ケサンラのような治療薬は、比較的早い段階が前提になるため、気になった時点での受診が重要になることがあります。

もちろん、すぐに治療の対象になるとは限りません。ただ、今の状態を知っておくことは、将来の選択肢を考えるうえで大きな意味があります。

新しい認知症治療薬について詳しく知りたい方

「まだ治療対象かどうかはわからないけれど、新しい認知症治療薬について知っておきたい」という方も、ぜひご相談ください。情報が多く複雑なテーマだからこそ、正しく整理するだけでも意味があります。

今すぐ治療を始めることが目的ではなくても「自分はどの段階なのか」「今後どんな選択肢がありうるのか」を知ることで、不安が少し軽くなることもあります。

東京Dタワーホスピタルでの認知症治療のご相談

診察では、現在のもの忘れや生活上の困りごと、必要な検査の内容、ケサンラのような治療薬の対象になる可能性があるかどうかを段階的に確認していきます。

すぐに薬を始めることを前提にする必要はありません。
まずはぜひお気軽にご相談ください。

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まとめ

ケサンラは、アルツハイマー病によるMCIまたは軽度認知症を対象とした、新しい認知症治療薬です。従来の治療薬とは異なり、病気の進行そのものに働きかけることが期待される一方で、適応を判断するための検査や、安全に使うためのMRI確認が欠かせません。

治療を検討されている方はぜひ東京Dタワーホスピタルまでお気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

白土 充

Mitsuru Shirato

専門分野 脳血管治療

1993年 京都府立医科大学卒業後 京都府立医科大学付属脳血管系老化研究センター 神経内科入局、1995年 京都府立医科大学付属病院 脳神経外科入局、1996年済生会滋賀県病院 脳神経外科、1997年 社会保険神戸中央病院 脳神経外科、2003年 私立福知山市立病院 脳神経外科、2006年 独立行政法人国立病院機構舞鶴医療センター 脳神経外科、2019年 京都中部総合医療センター 脳神経外科、2022年 東京Dタワーホスピタル 脳神経外科 部長

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