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前立腺肥大症とは?症状と治療法|血管内治療(PAE)の特徴も解説

Author :脳神経外科 新見康成

「夜中に何度もトイレに起きるようになった」
「尿の勢いが弱くなった」
「外出先でトイレの場所が気になる」

こうした排尿の変化に気づいても「年齢のせいだから仕方ない」とそのままにしていませんか?

これらの症状の背景には「前立腺肥大症」が関係していることがあります。
近年では治療法も進歩しており、従来の薬や手術だけでなく、体への負担を抑えた血管内治療(前立腺動脈塞栓術)という選択肢も登場しています。

この記事では「前立腺肥大症とはどのような病気か」という基本的な説明から「血管内治療とは何か」、「どのような方に向いているのか」までわかりやすく解説していきます。

前立腺肥大症とは?

前立腺肥大症は中高年男性に多く見られる代表的な疾患の一つです。
まずはどのような病気なのか、その基本的な仕組みを整理しておきましょう。

前立腺肥大症とはどんな病気か

前立腺肥大症とは、膀胱の下にある「前立腺」という臓器が大きくなり、尿道を圧迫することで排尿に関するさまざまな症状を引き起こす状態を指します。

前立腺は男性特有の臓器で、尿道を取り囲むような位置に存在しています。そのため、前立腺が肥大すると尿の通り道が狭くなり、尿が出にくくなったり、残尿感が生じたりします。

これの症状はゆっくりと進行することが多く、初期には「少し出にくい」と感じる程度でも、時間の経過とともに日常生活に影響が出るケースも少なくありません。

主な原因(加齢・ホルモン変化など)

前立腺肥大症の主な原因は、加齢に伴う体の変化と考えられています。
特に男性ホルモンの影響が関与しているとされ、年齢とともに前立腺の細胞が増殖しやすくなることが背景にあります。

一般的には50歳以降で増加し、加齢とともに発症頻度が高くなる傾向があります。また、生活習慣や体質なども影響すると考えられていますが、明確に一つの原因で説明できるものではなく、複数の要因が関与しているとされています。

前立腺肥大症の症状|日常生活への影響

前立腺肥大症の症状は「排尿」に関するものが中心ですが、その影響は生活全体に広がります。

よくある症状(頻尿・残尿感・尿勢低下)

代表的な症状としては以下のようなものがあります。

  • 夜間に何度もトイレに起きる(夜間頻尿)
  • 尿の勢いが弱くなる
  • 排尿に時間がかかる
  • 排尿後もすっきりしない(残尿感)

これらの症状は徐々に進行するため「年齢の変化」として見過ごされやすい傾向があります。しかし、症状が進むと排尿困難や尿閉(尿が出なくなる状態)につながることもあるため注意が必要です。

生活の質(QOL)への影響

排尿トラブルは単なる不快感にとどまらず、生活の質(QOL)に大きな影響を与えます。

例えば、夜間頻尿によって睡眠が妨げられると、日中の集中力低下や疲労感につながります。また、外出時にトイレの場所を気にするようになり、行動範囲が狭くなるケースもあります。

こうした積み重ねが、心理的なストレスや社会生活への制限につながることもあり「たかが排尿の問題」と軽視できない側面があります。

前立腺肥大症の治療法|薬・手術・血管内治療

前立腺肥大症の治療は、症状の程度や患者さんの状態に応じて段階的に選択されます。

薬物療法(第一選択)

比較的軽度から中等度の症状では、まず薬物療法が検討されることが一般的です。

代表的な薬には、尿道の緊張を緩めて尿の通りをよくするα遮断薬や、前立腺の肥大を抑える作用を持つ薬などがあります。
これらにより症状の改善が期待されますが、効果の出方には個人差があり、十分な改善が得られない場合もあります。

外科手術(TURPなど)

薬物療法で改善が見られない場合や症状が強い場合は外科的な治療が検討されます。
代表的な方法として、経尿道的前立腺切除術(TURP)などがあります。

これは前立腺の一部を切除して尿道の通りを広げる方法で、確立された治療法ですが、入院や出血、合併症などのリスクも考慮する必要があります。

低侵襲治療という選択肢

近年では、従来の手術よりも体への負担が少ない「低侵襲治療」が注目されています。

組織を切除するのではなく、熱やデバイス、血流制御などを利用して症状を改善する治療法が開発されており、その中の一つが今回解説する「血管内治療」です。

前立腺肥大症に対する血管内治療とは(PAE)

血管内治療は前立腺肥大症に対する新しいアプローチとして注目されている治療法です。

血管内治療(前立腺動脈塞栓術)の仕組み

血管内治療(前立腺動脈塞栓術:PAE)は、前立腺に血液を供給している動脈の血流を調整することで、前立腺の縮小を促す治療です。

血流が減少することで前立腺組織に変化が起こり、結果として尿道への圧迫が軽減され、排尿症状の改善が期待されます。

どのように行う治療?(カテーテル治療)

この治療は足の付け根や手首の血管から細いカテーテルを挿入し、前立腺に血液を供給する動脈まで誘導して、プラスチックの粉やコイル等で血流を遮断します。

皮膚を大きく切開する必要がなく、画像を見ながら治療を進めるため、体への負担を抑えた方法とされています。
通常は局所麻酔で行われることが多く、全身麻酔を必要としない点も特徴の一つです。

血管内治療の特徴(低侵襲・全身麻酔不要など)

血管内治療の特徴としては、以下のような点が挙げられます。

  • ・尿道を介した治療が不要で、体への負担が比較的少ない
  • ・全身麻酔を必要としない場合が多い
  • ・入院期間が短くなる

一方で、すべての方に適しているわけではなく、症状や前立腺の状態に応じた判断が重要になります。

血管内治療はどんな人に向いているか

血管内治療はすべての前立腺肥大症の患者さんに適応されるわけではありませんが、特定の条件の方にとって有力な選択肢となることがあります。

手術リスクが高い方・高齢の方

全身麻酔や外科手術の負担が大きいと考えられる高齢の方や、持病をお持ちの方にとっては低侵襲な治療である血管内治療が検討される場合があります。

体への負担をできるだけ抑えながら治療を行いたいというニーズに応える方法の一つと言えるでしょう。

抗凝固薬を服用している方

心疾患や脳血管疾患の既往がある方など、抗凝固薬を服用している場合、手術に際して薬の調整が必要になることがあります。

血管内治療はこうした方に対しても検討されることがあり、治療の選択肢が広がる可能性があります。

前立腺が大きい方など

前立腺の大きさや形状によっては、従来の手術以外の選択肢として血管内治療が検討されるケースもあります。

ただし、適応については画像検査や症状の評価をもとに医師が総合的に判断する必要があります。

血管内治療の注意点と理解しておきたいこと

新しい治療法であるからこそ、メリットだけでなく注意点も理解しておくことが大切です。

すべての方に適応されるわけではない

血管内治療は有望な選択肢の一つですが、すべての前立腺肥大症に適応されるわけではありません。泌尿器科専門医によって良性前立腺肥大症と診断され、これによる症状が認められる方々が対象となりますが、前立腺があまり大きくない場合は血管内治療の効果が少ないとされています。前立腺がんの疑いがある方は治療をうけることができません。また、動脈硬化が非常に強い場合も血管内治療ができない場合があります。

また、症状の程度や前立腺の状態、全身状態などを踏まえて、他の治療法と比較しながら適切な方法が選択されます。

効果や経過には個人差がある

治療の効果や経過には個人差があり、症状の改善度や持続期間も一様ではありません。

そのため「どの程度の改善が期待できるのか」や「どの治療が自分に合っているのか」については、医師と十分に相談しながら決めていくことが重要です。

東京Dタワーホスピタルでの診療について

前立腺肥大症の治療は、症状やご希望に応じて最適な方法を選択することが大切です。

東京Dタワーホスピタルでは良性前立腺肥大症に関して、当院の血管内治療センターの血管内治療専門医が血管内治療を施行しています。

血管内治療を含めた治療の選択肢についても、患者さん一人ひとりの状態に応じて検討されますので、まずは血管内治療センターでご相談ください。

「まだ受診するほどではないかも」と感じる段階でも、早めに相談することで適切な対応につながります。

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まとめ

前立腺肥大症は加齢とともに多くの方にみられる疾患であり、排尿に関する悩みを引き起こします。症状は生活の質にも大きく影響するため、適切なタイミングでの評価と治療が重要です。

治療には薬物療法や外科手術に加え、近年では体への負担を抑えた血管内治療という選択肢も登場しています。
それぞれに特徴があるため、ご自身の状態や希望に合わせた治療を医師と一緒に選択しましょう。良性前立腺肥大症で困っているけれども手術以外の治療法をお探しの方は、血管内治療専門医に相談してみることをおすすめします。

この記事を書いた人

新見 康成

Yasunari Niimi

脳神経外科
アドバイザリーボードメンバー

東京医科歯科大学 脳神経外科 研修医・助手
ニューヨーク大学メディカルセンター 放射線科 レジデント
ベスイスラエルメディカルセンター 血管内外科 アテンディング
ルーズベルト病院 血管内外科 アテンディング
アルバートアインシュタイン大学 臨床放射線科・臨床脳神経外科 教授
聖路加国際病院 特別顧問

日本脳神経外科学会認定医   
日本脳神経血管内治療学会指導医・専門医   
米国放射線学会専門医
日本血管腫血管奇形学会評議員

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