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眼窩内腫瘍とは?症状・検査・手術後の経過を脳神経外科が解説
最近「片方の目だけ出てきた気がする」「物が二重に見えることが増えた」といった変化に気づき、インターネットで「目 突び出す」「目 できもの」、あるいは病院でいわれた「眼窩内腫瘍」という病名などを調べて、ここにたどり着いた方もいらっしゃるかもしれません。
「腫瘍」という言葉を目にすると、とても不安になりますが、眼窩内腫瘍にはいくつかのタイプがあり、すべてが悪性というわけではありません。
この記事では眼窩内腫瘍とはどのような病気か、そして検査や治療について、ご紹介していきます。
目次
眼窩内腫瘍とは?
まずは「眼窩内腫瘍」とはどのような症状が出る病気なのかなど全体像を確認していきます。
眼窩内腫瘍とはどんな病気?
眼窩(がんか)とは、頭蓋骨の中で眼球が収まっている骨のくぼみのことです。この眼窩の中に、しこりのような「できもの」が生じた状態を、眼窩内腫瘍と呼びます。
眼窩内腫瘍には、
- ・ゆっくり大きくなる、良性腫瘍
- ・増え方が早かったり、周囲に広がったりする悪性腫瘍
- ・腫瘍のように見えるが、腫瘍ではない病変
などがあり、性質や背景はさまざまです。
なにもせず様子をみていればよいものから、早急な治療を要するものまで、とても多くの種類がありますので、視力や見た目の変化が進行する前に、眼窩内腫瘍の診療にたずさわる医師に相談することが大切です。
眼窩の構造と「脳神経外科」が関わる理由
眼窩の中には眼球の他に、下記のような「見る」ための構造が集まっています。
- ・視神経(目と脳をつなぐ神経)
- ・眼球を動かす筋肉
- ・血管や他の神経
- ・脂肪組織 など
そして、眼窩のすぐ奥には頭蓋底や脳が位置しています。
そのため、腫瘍が
- ・眼窩の奥にある
- ・視神経や頭蓋底に近い
- ・脳側から眼窩のなかへ伸びてきている
- ・鼻側から眼窩のなかに伸びてきている
という場合などは、脳や神経の手術、経鼻頭蓋底手術を専門とする、「脳神経外科」の領域になります。
ただし、眼窩内腫瘍は数が少ないため、脳神経外科でも、治療経験がある医師は限られます。
東京Dタワーホスピタルでは、眼窩内腫瘍の治療経験豊富な脳神経外科医のもと、診断・治療の体制を整えています。
眼窩内腫瘍の主な症状
眼窩内腫瘍でみられる症状は腫瘍の場所や大きさによって異なりますが、一般的には次のようなものが挙げられます。
- ・片方の目だけ前に出てきたように見える(眼球突出)
- ・物が二重に見える(複視)
- ・視力が落ちた、見える範囲が狭くなった気がする
- ・目の奥の重い感じ、痛み、違和感
- ・まぶたの腫れや左右差
ただ全ての方に同じ症状が出るわけではありません。
ゆっくり進行する腫瘍の場合、自分では変化に気づきにくく、家族や友人から「目の位置が前と違う」と指摘されて受診するケースもあります。他にも「疲れのせい」「年齢のせい」と自己判断してしまうと、受診が遅れてしまうこともあります。
気になる症状が続くときは、自己判断を避け、早めに専門医に相談するようにしましょう。
眼窩内腫瘍の原因と種類
ここでは、眼窩内腫瘍にはどのようなタイプがあるのかを説明していきます。
まず発生のしかたとして、
- ・眼窩のなかに直接発生するもの(9割ほど)
- ・鼻などまわりにできた腫瘍が眼窩にはいりこんできたもの(数%~1割弱)
- ・体の別の場所にできた腫瘍が眼窩のなかに転移してきたもの(数%)
に分けることができます。
そして、腫瘍そのものは「良性腫瘍」「悪性腫瘍」「腫瘍のように見えるが、腫瘍ではない病変」に分けられます。
良性腫瘍:神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)、海綿状血管腫(かいめんじょうけっかんしゅ)、涙腺多形腺腫(るいせんたけいせんしゅ)、髄膜腫(ずいまくしゅ)、皮様嚢腫、リンパ管腫 など
悪性腫瘍:悪性リンパ腫、涙腺癌、横紋筋肉腫、転移性腫瘍 など
腫瘍に見えるが、腫瘍ではない病変:リンパ過形成、サルコイドーシス、IgG4関連疾患、甲状腺眼症、特発性炎症など
このように、代表的なものだけでも多くの種類があり、こまかい分類はさらに多岐にわたります。
また、リンパ増殖性疾患(悪性リンパ腫やリンパ過形成、IgG4関連疾患などの総称)は、良性と考えられていたものが数年後に悪性化したりすることもあり、眼窩内腫瘍の診療をより難しくしています。
できた場所や、画像の特徴、年齢などを考えながら、診断と治療方針を考えていきます。
眼窩内腫瘍の検査と診断
次は眼窩内腫瘍が疑われたときに、どのような検査を受けるのかをご紹介します。
診察と視機能のチェック
まずは医師による問診と診察から始まります。
問診では下記のような項目について確認していきます。
- ・いつ頃から症状が気になり始めたか
- ・症状が徐々に強くなっているか、急に出たのか
- ・視力低下や二重に見える症状があるか
- ・頭痛や全身の病気の有無
続いて、視力検査や視野・眼球の動きなどのチェックなどを行います。
脳神経外科の場合は、これに加えて顔の動きや感覚、他の神経症状の有無なども含めて、全体的な状態を確認することがあります。
画像検査(CT・MRI など)の役割
眼窩内腫瘍の診断には画像検査がとても重要な役割を果たします。
- ・CT検査:骨の状態や、腫瘍の石灰化、位置関係などを確認するのに役立ちます。造影剤をもちいて血流の状態をみることができます。
- ・MRI検査:眼球や神経、筋肉などの軟らかい組織の状態と、腫瘍との位置関係を詳しく見ることができます。
これらの画像検査によって腫瘍が「どこにあるか」「どんな腫瘍が疑われるか」「手術が必要かどうか」「どのようにアプローチするか」を考えていきます。検査について不安があれば、事前にスタッフに質問しながら受けて頂ければと思います。
眼窩内腫瘍の治療法
ここからは「眼窩内腫瘍と診断されたとき、必ず手術になるのか?」「経過観察もあり得るのか?」といった、治療方針の全体像を見ていきます。
経過観察になることもある眼窩内腫瘍
眼窩内腫瘍=すぐに手術、というわけではありません。
特に、神経鞘腫や海綿状血管腫などの良性腫瘍が疑われる場合、
- ・腫瘍が小さい
- ・進行が非常にゆっくり
- ・視力や目の動きへの影響がほとんどない
- ・見た目の変化も軽く、日常生活に大きな支障がない
といったときには、定期的な画像検査や診察で経過を見ていくことが多くなります。
ただし、このような場合でも腫瘍が大きくなっていないか、視力・視野に変化がないか、新しい症状が出ていないかなどをチェックし、必要に応じて治療方針を見直していきます。
手術が検討される眼窩内腫瘍
一方、下記のような状態では手術による治療が検討されることが多くなります。
- ・視力低下や視野障害が進んできている
- ・二重に見えるなどの症状が強く、日常生活に支障がある
- ・目がとびだしてきて、見た目や痛みが気になる
- ・手術を安全に行いやすい大きさや場所である
- ・腫瘍が短期間で明らかに大きくなっている
手術が適切かどうかは、腫瘍の種類・場所や、年齢、持病などを総合的に考えた上で決められます。
放射線治療・薬物療法が関わるケース
腫瘍の性質によっては、手術以外の治療法が選択されることもあります。
- ・放射線治療
- ・抗がん剤・分子標的薬などの薬物療法
- ・硬化療法
などがその例です。
ただし、多くの場合は、手術によって確定された診断に基づいて、追加治療として行われます。
例えば悪性リンパ腫が疑われる場合には、はじめから術後の追加治療を念頭において、体の負担の少ない「生検術」にとどめる手術計画を立てたりします。
これらの治療が必要な場合には他の専門科とも連携しながら「手術だけ」「薬だけ」と分けて考えるのではなく、全体として最適な治療の組み合わせを検討していくことになります。
眼窩内腫瘍の手術とは?
ここでは「眼窩内腫瘍の手術とはどのようなものか」「どんな目的で行うのか」をご紹介します。
手術の目的
眼窩内腫瘍の手術の目的には、主に下のようなものがあります。
- ・眼球突出を改善させること
- ・眼球の動きや見え方を守ること
- ・診断を確定して、良性か悪性か、追加治療が必要かなどを判断すること
症状をよくしたり、悪化をふせいだりすることを目的にしっかり腫瘍を取りのぞく場合は「摘出術」、診断を確定するために腫瘍の一部だけを採取する場合は「生検術」といいます。
また摘出術でも、視神経や血管など大切な構造を守ることを優先して、腫瘍の一部を残しつつ症状の原因となっている部分を減らす、といった方針が選ばれることもあります。
手術アプローチの例
眼窩内腫瘍の手術には腫瘍の位置や広がり方に応じていくつかのアプローチ方法があります。
- ・髪の毛の中を切って、頭側から目の上の骨をあけ、眼窩の奥の腫瘍に近づく方法
- ・目のまわりや眉毛周囲の皮膚を切って眼窩の前の方の腫瘍に近づく方法
- ・鼻の穴から、眼窩の内側や下側の腫瘍に近づく方法
などが代表的です。
どの方法を選ぶかは腫瘍が眼窩のどの位置にあるかや頭蓋底や脳との位置関係によって決まります。
実際の手術内容については、担当医師が個々の症例に合わせて説明します。
眼窩内腫瘍手術後の経過と生活
ここからは眼窩内腫瘍の術後の流れや生活のイメージをお伝えします。
手術直後〜入院中の経過
眼窩内腫瘍の手術後は、しばらく入院での経過観察が行われます。
直後にはまぶたや目の周りの腫れ、内出血や、目の奥の痛みや違和感、一時的な視界のぼやけなどが見られることがあります。
これらは手術に伴う変化としてある程度想定されるもので、多くの場合は時間の経過とともに落ち着いていきます。
ものが二重に見える場合などは、退院後にスムーズに生活に戻れるよう、セラピストと共にリハビリテーションを行います。
術後、1週間程度で抜糸を行い、体の状態にあわせて退院します。
症状の回復について
目の飛び出し(眼球突出)は、腫瘍の摘出によって改善が期待できます。腫瘍が大きい場合や経過が長い場合には、かえって目が少し凹むこともありますので、手術時に脂肪や骨の形成に工夫が必要です。
視力や目の動きの回復については、術前の目の状態や腫瘍の場所、種類によって、患者さんごとに大きく異なります。
手術に伴う合併症も同じで、たとえば同じ神経鞘腫という良性腫瘍であっても、眼窩の辺縁にできたものは安全にとれますが、視神経の直下にできた場合には散瞳(瞳孔がひらいて非常にまぶしい)や眼球運動障害がでやすい、といったことがあります。
そのため、術前には
- ・手術を含め、どんな治療が適切か
- ・どの程度の改善が期待できるのか
- ・どのようなリスクがあるのか
について、主治医とよく話し合っておく必要があります。
術後も定期的に目の位置や視力・視野・眼球運動を確認しながら、必要に応じて眼鏡の調整や生活上の工夫も含めたサポートを受けていくことになります。
日常生活・仕事への復帰の目安
頭のキズなどは、術後2日目から洗髪しシャワーをしていただけます。目の周囲については、直後の数日間は水が当たることを制限したり、点眼薬などを使用したりすることがあります。
退院後の仕事復帰は制限していませんが、無理せず体調や眼の状態にあわせて徐々に仕事やパソコン作業などを増やせるよう、余裕をもったスケジュールをたてることが重要です。
視力・視野に強い障害が残る場合や、ものが二重に見える場合は、運転制限を要することがあります。
東京Dタワーホスピタル脳神経外科での眼窩内腫瘍診療の特徴
東京Dタワーホスピタルでは脳や頭蓋底に近い眼窩内腫瘍に対して、脳神経外科が中心となって診断・治療を行っています。
- ・画像検査の結果
- ・症状の程度
- ・全身状態
を総合的に見ながら「手術か経過観察か」・「他の治療も組み合わせるか」など、一人ひとりに合わせた方針を検討します。
他科連携・セカンドオピニオンへの対応
眼窩内腫瘍の患者さんのなかには、
- ・他院の眼科や脳神経外科で説明を受けたが、もう少し話を聞いてみたい
- ・手術の選択肢について聞いてみたい
といった方もいらっしゃいます。
東京Dタワーホスピタルではセカンドオピニオンのご相談や必要に応じた他診療科との連携も行いながら、治療方針を一緒に検討していきます。
眼窩内腫瘍に関するよくある質問
最後に眼窩内腫瘍についてよく寄せられる質問にお答えしていきます。
眼窩内腫瘍は必ず手術が必要ですか?
いいえ、必ずしも全員が手術になるわけではありません。
腫瘍が小さく、症状がほとんどなく、進行もゆっくりと考えられる場合には、定期的な画像検査で経過をみるケースも多くあります。
良性の場合は治療をしなくても良いですか?
良性でも、場所や症状によっては治療が必要になることがあります。また、前述した「腫瘍に見えるが腫瘍ではない病変」であっても同様です。
精査の結果を踏まえ、医師が総合的に判断します。
まとめ
眼窩内腫瘍とは目の奥(眼窩)の中に生じる腫瘍の総称で、良性のものから悪性のものまでさまざまなタイプがあります。
東京Dタワーホスピタルでは脳神経外科が中心となって眼窩内腫瘍の診療にあたり、必要に応じて他科とも連携しながら、患者さん一人ひとりに合った治療方針を一緒に検討していきます。
「もしかして自分の症状も関係あるかも…」と感じたら、どうぞお気軽にご相談ください。
この記事を書いた人
岸田 悠吾
Yugo Kishida
東京頭蓋底・内視鏡センター:センター長
専門分野:神経内視鏡手術、経鼻頭蓋底手術、微小血管減圧術、低侵襲手術(内視鏡下鍵穴手術)
神経内視鏡手術(経鼻手術、鍵穴手術など)を専門としています。15年以上、1000件を超える神経内視鏡手術の経験の中で、確実に手術目的を達成すること、合併症リスクを最小化することに努めてきました。
「とにかく丁寧で、脳と体に負担の少ない、美しく正確な手術」を心がけています。

