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医療コラム 循環器内科

見逃すと命に関わる?心筋梗塞の前触れ症状とは|早期対応の重要性と受診の目安

Author :東京Dタワーホスピタル 循環器内科 齋藤 智久

はじめに

「最近、胸が苦しい気がするけれど大丈夫だろうか」「親が胸の痛みを訴えたけれど、すぐに病院へ連れていくべき?」

こうした不安を感じている方に向けて、この記事では心筋梗塞の「前触れ症状」に注目し、どんな症状が危険なのか、どう判断すべきかをわかりやすく解説します。
東京Dタワーホスピタルでは、こうした疑問を抱える方が早期に行動できるよう、専門医による診療体制を整えています。

心筋梗塞とは?突然起こる命の危機

そもそも心筋梗塞とはどのような病気なのでしょうか?
ここでは基本的な心筋梗塞の情報についてご紹介します。

心筋梗塞はどんな病気?

心筋梗塞とは、心臓の筋肉に血液を送る冠動脈が血栓などで突然詰まり、心筋の一部が壊死してしまう病気です。
発症が突発的であり、発見・治療が遅れると命に関わる可能性もあります。

血管・血栓が引き起こす突然の発作

この病気の恐ろしさは、何の前触れもなく突然発症し、命に関わる可能性もあることです。主な原因は冠動脈粥腫(プラーク)の破綻とそれに伴う血栓形成により冠動脈内腔が急速に閉塞、もしくは閉塞に近い状態になることです。

狭心症との違いと関連性

心筋梗塞と類似した病気に、同じ虚血性心臓疾患の狭心症があります。両者の違いは、冠動脈の虚血(心臓の筋肉の血流不足)の起こり方にあります。

心筋梗塞は冠動脈が血栓などで塞がり血流がなくなってしまった状態であるのに対し、狭心症は冠動脈の内腔が狭くなった状態で、まだいくらかは血流があります(イメージでいうと、砂時計の真ん中のように冠動脈の内腔が細くなることで流れが悪くなっている状態です)。したがって、血流がなくなってしまう心筋梗塞のほうが狭心症よりも危険で重篤と言えます。

どちらも、胸の痛みや圧迫感といった症状が出ますが、狭心症では、そうした症状が数分から長くても15分程度と一時的なのに対し、心筋梗塞では30分以上継続し、安静にしたり狭心症の代表的な症状の一時的改善薬であるニトログリセリンを服用したりしても、治らないところです。

狭心症は重症化すると心筋梗塞に進行する可能性もあります。

心筋梗塞の「前触れ」症状とは?

基本的に、心筋梗塞は突然発症が主体であり、「前触れ・前兆」となるような症状がないことも多いです。

かつては、狭心症が進行することで心筋梗塞が起こると考えられていましたが、現在では、必ずしもそうではないことが分かってきました。今まで狭心症の症状が出ていなかったのに、突然心筋梗塞を起こす人が、発症者の約半数にも及びます。

突然以下の症状が起きた時は、早めに医療機関を受診して下さい。

典型的な症状(胸の痛み・違和感)

心筋梗塞の症状として最も特徴的なのは、脂汗や冷や汗が出るほどの激しい胸の痛みです。「痛み」というよりも、胸が締め付けられるような圧迫感、胸全体が強く押され息が出来ない、胸が焼けつくような感じ、と表現されるケースもあります。

背中・肩・顎・心窩部(みぞおち)などの痛みとして現れるケース

痛みは胸部に限らず、左肩や背中、顎、腕に「放散」することもあります。特に「肩こりと勘違いした。心窩部(みぞおち)の痛みなので胃腸系の病気だと思っていた。」という人も多く、注意が必要です。

冷や汗・動悸・吐き気などの全身症状

動悸、冷や汗、めまい、倦怠感、吐き気、息苦しさなど、心臓から離れた症状として現れることもあります。
これらの症状は「体調が悪い」としか表現できないこともあり、見逃されがちなため注意が必要です。

性別や年齢で異なる症状の出方

女性や高齢者、糖尿病がある方では典型的な胸痛が出にくく、息切れや倦怠感のみの場合も。本人が症状を軽く見てしまうことがあるため、家族が変化に気づくことが大切です。

前触れかもしれない時のセルフチェック

上記の通り、突然症状が出現し心筋梗塞を起こす人は発症者の約半数に及びますが残りの約半数は、発症する1~2か月以内に胸の痛みや締め付けられる感じなどの前触れ・前兆を経験します。

胸痛や圧迫感、繰り返す違和感など、「これまでになかった変化」に注意を払いましょう。

症状の出るタイミングと持続時間

運動中や階段の上り下りなどで症状が出やすく、数分〜15分程度続く場合があります。
「安静にしても改善しない」「徐々に頻度や持続時間が増えてきた」と感じたら、早期の受診が望まれます。

繰り返す発作や違和感の見極め方

一度症状が落ち着いても、数日以内に再発することがあります。
繰り返す違和感は「狭心症→心筋梗塞」のシグナルかもしれません。

「いつから異変があったか」を記録する

胸痛や動悸がいつ・何をしているときに起きたかをメモしておくと、医師の診断に役立ちます。
時間帯や食事・運動・入浴後など、状況と関連づけて記録しておくと、病気の進行度やきっかけを特定しやすくなります。

前触れではない可能性もある症状とは?

症状が似ていても、心筋梗塞ではない場合もあります。
以下のような特徴と照らし合わせ、慎重に見極めましょう。

ストレス・自律神経失調による症状との違い

緊張や不安による胸の違和感は休息や睡眠で改善することが多いです。痛みの強さや持続時間に注目しましょう。

消化器や筋肉の痛みとの見分け方

胃の不調や筋肉痛は押すと痛みが強くなるものもありますが、心筋梗塞の痛みは「触っても変化しない」のが特徴です。

「気にしすぎ?」という不安との付き合い方

心臓の病気である可能性を考えると、不安を抱えることは当然です。
症状が続く・再発する場合は自己判断せず、専門医を受診しましょう。「何でもないかも」と思っても、数日後に症状が悪化するケースもあります。
専門医に相談することで安心できるだけでなく、万が一に備えて早めに手を打つことができます。

すぐに受診すべきサインと行動の目安

「もしかして…?」と迷っている間に病状が進行する可能性もあります。
以下のようなサインがあれば、速やかに医療機関へ連絡しましょう。

「これは危険!」な胸痛や息切れの見分け方

15分以上続く胸の痛み、呼吸困難、冷や汗、嘔吐などの複数症状が出ている場合はすぐに受診を。
特に症状が組み合わさって現れる場合は、心筋へのダメージが進行している可能性があります。

「ちょっと変だな」と感じたときに受診することで、大きな後悔を防げます。

救急車を呼ぶタイミングの判断基準

意識がもうろうとする、会話が困難、歩けない状態は迷わず119番で救急車を呼んでください。
また、過去に心臓病の診断を受けている方や高血圧・糖尿病・高脂血症などの既往歴がある方は判断を早めることが大切です。
家族や周囲の人の判断も非常に重要になります。

迷ったときは循環器内科にすぐ相談

軽い症状でも不安があるなら、循環器専門医がいる内科への相談が早期発見に繋がります。

「病院に行っていいのか迷う」そんな時こそ、相談することが大切です。
少しでも不安を感じたら、ためらわず専門医に相談することで重篤化を防ぐことができます。

まとめ|前触れを見逃さず、早めの受診を

心筋梗塞は「前触れに気づけるかどうか」で結果が大きく変わる病気です。
「ちょっとおかしいな」と思ったときの早期受診が、自分や家族の命を守る第一歩になります。

東京Dタワーホスピタルは、心臓・血管の専門家が常駐する施設として、どんな小さな不安にも迅速に対応します。

この記事を書いた人

齋藤 智久

Tomohisa Saito

専門分野 虚血性心疾患、循環器一般

少子高齢化が進み、高齢者医療は地域医療の中心になっています。地域医療の中で病院に求められるものは、病気を診て治すことだけではなく、患者さんご自身・ご家族・生活に関わることによって病気の再発を予防していく取り組みも大事な役割になっています。
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