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大動脈瘤の治療は?人工血管置換術とステントグラフト内挿術を比較解説
Author :東京Dタワーホスピタル 心臓血管外科部長 木内 竜太

大動脈瘤は進行すると破裂の危険があり、破裂時の死亡率は非常に高い疾患です。一定の大きさや成長スピードに達すると、外科的な治療が必要になります。
今回は大動脈瘤治療の2つの主要手術「人工血管置換術」と「ステントグラフト内挿術(TEVAR・EVAR)」を比較し、それぞれの特徴・メリット・デメリット、そして選択のポイントを解説します。
目次
大動脈瘤の治療が必要になるタイミング
動脈瘤があまり大きくなく破裂の可能性が低い場合は、降圧薬や脂質異常症の管理、禁煙などの生活改善によって進行を遅らせます。しかし、薬物治療では根治はできません。
瘤が一定以上に拡大した場合や、症状が出ている場合には手術が必要です。
手術適応の目安は瘤の大きさ、成長速度、部位によって異なりますが、早期の外科的介入が命を守る鍵となります。
人工血管置換術とは
人工血管置換術の概要と歴史
人工血管置換術とは大動脈瘤を切除して人工血管に置き換える方法です。(fig.3:人工血管 a:胸部用4分枝型、b:腹部用Y型)

50年以上の歴史があり、根治性の高さが特徴です。一度治療すれば再発はほとんどありません。(fig.4:腹部大動脈瘤に対する人工血管置換術 a:イメージ、b:術前CT、c:術後CT)

手術の流れと技術的工夫
胸腹部大動脈瘤では、人工心肺を用いて臓器の血流を維持しながら手術します。脳や脊髄、内臓への動脈に及んでいる場合は、それらも人工血管につないで再建します。
当院では、従来の20℃の超低体温法ではなく30℃程度の軽度低体温法を採用し、出血リスクを抑えつつ手術時間を短縮。輸血なしでの手術も可能です。
人工血管置換術のメリットとデメリット
- ・メリット:長期的な安定性、再発がほぼない
- ・デメリット:開胸/開腹による侵襲性が高く、合併症リスクや回復期間が長い
ステントグラフト内挿術とは(TEVAR・EVAR)
ステントグラフトの仕組み
ステントグラフトは、金属バネ状の「ステント」と人工血管(グラフト)を組み合わせたデバイスです。(fig.5: 胸部用ステントグラフト)
足の付け根からカテーテルを挿入し、瘤の内側に留置します。これにより瘤壁に血圧がかからなくなり、破裂を防ぎます。

手術の流れ
- 1. 足の付け根の動脈からカテーテルを挿入
- 2. 瘤部位まで誘導し、ステントグラフトを解放
- 3. 血液がステントグラフト内を通るようになり、瘤への圧力を遮断。
- (fig.6:ステントグラフト内挿術イメージ、fig.7:胸部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術 a:術前CT、b:術後CT)


ステントグラフト治療のメリットとデメリット
- ・メリット:開胸・開腹が不要で体への負担が少ない、回復が早い
- ・デメリット:適応できる瘤の形や部位が限られる、長期耐久性に課題がある場合がある
人工血管置換術とステントグラフトの比較
人工血管置換術とステントグラフトにはそれぞれメリット・デメリットがあります。
ここではわかりやすいように2つの治療法について表形式でまとめました。ぜひ参考にしてください。
項目 | 人工血管置換術 | ステントグラフト内挿術 |
適応 | 幅広い症例 | 部位・形状によって制限あり |
侵襲性 | 高い(開胸・開腹) | 低い(カテーテル) |
入院期間 | 長め(約2〜4週間) | 短め(約1週間) |
再発率 | ほぼなし | わずかにあり |
長期耐久性 | 高い | 症例により追加治療が必要なことも |
ハイブリッド治療という選択肢
複雑な大動脈瘤や複数部位にまたがる瘤の場合、人工血管置換術とステントグラフト内挿術を組み合わせる「ハイブリッド治療」が選択されることもあります。
これにより、それぞれの治療法の長所を活かし、患者様の負担を最小限に抑えつつ根治性を確保できます。(fig.8:胸部大動脈瘤に対するハイブリッド治療 a:イメージ、 b:術前CT、c:術後CT)

まとめ|大動脈瘤治療は個別の最適化が重要
大動脈瘤治療は瘤の部位や形状、患者様の全身状態により最適な方法が異なります。人工血管置換術、ステントグラフト、ハイブリッド治療のいずれも専門的な判断が必要です。
東京Dタワーホスピタルでは大動脈瘤の診断・治療に精通した心臓血管外科専門医が在籍しています。
少しでも気になる症状やご不安がある方は、お早めに当院までご相談ください。

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この記事を書いた人
木内 竜太
Ryuta Kiuchi
専門分野 成人心臓血管外科全般
心臓血管外科部長の木内と申します。医学部を卒業後、現ニューハート・ワタナベ国際病院総長の渡邊剛先生が主宰する金沢大学心肺・総合外科に入局し、大学や関連病院にて研鑽を積み、現在に至ります。
今までの豊富な経験から、同じ疾患でも患者さんそれぞれの年齢、体力、病状等に応じて、最適な術式・アプローチをご提案させていただきます。
大切な心臓は一つしかありません。治療の事でお悩みならば、まずは当院にご相談ください。

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