心房細動は、心房と呼ばれる心臓の部屋が不規則に収縮してしまう不整脈です。日本では約130万人の患者がいるとされ、徐々に患者数は増加しています。心房細動は、脳梗塞や心不全を引き起こす原因となりますが、適切な治療により心房細動がない方と同じような生活ができます。
主な症状は、脈の乱れ、動悸、めまい、息切れ、倦怠感などです。心房細動は直接的に死亡の原因にはなりませんが、心房細動がない人に比べ、脳梗塞が約5倍、心不全が約4倍起こりやすくなります。
心房細動は心房が細かく震え、血液が淀んでおり、血栓が形成されやすい状態となっています。血栓が血流に乗り飛んでいくと、全身の臓器に栄養を送る血管を詰まらせてしまいます。脳の血管が詰まると、心原性脳塞栓と呼ばれる脳梗塞を発症します。心原性脳塞栓のダメージは広範囲で、半身麻痺などをきたし介護が必要となることが多く、最悪の場合は命を落とすこともあります。
心房細動は心房の収縮が失われ、心室が不規則に収縮している状態であり、常に心臓に負担がかかっています。これが続くと心臓の機能が破綻し、全身に十分な血液を送れない状態である心不全を引き起こします。血液は肺に溜まっていき、酸素を十分取り込めなくなるため呼吸困難を生じ、場合により命に関わることがあります。
心房細動の主な治療方法は、抗凝固療法と心房細動自体をコントロールする治療の二つが基本となります。心房細動自体のコントロールは、リズムコントロールとレートコントロールに分けられます。
心房細動が原因の脳梗塞(心原性脳塞栓)は重篤であり、その予防は大切です。血液を固まりにくくする抗凝固薬を毎日内服し予防します。これを抗凝固療法と呼び、特に血栓ができやすい「75歳以上、高血圧、糖尿病、心不全、脳梗塞を含む血栓塞栓症の既往」に当てはまる方には強く推奨されています。
心房細動自体を抑え、正常の拍動を維持する治療をリズムコントロールといいます。リズムコントロールには、抗不整脈薬の内服とカテーテルアブレーションの二つがあります。抗不整脈薬の内服は手軽ですが、心房細動の進行を抑えることはできません。年齢が進むほど副作用が増えるという問題もあります。カテーテルアブレーションは根治も期待できる有効な治療法であり、抗不整脈薬の内服より有力な治療として考えられるようになっています。
心房細動を予防して正常の拍動を維持することが理想ですが、実際には難しい方も多いのが現実です。心房細動と付き合い、心拍数を薬によって抑え、心不全予防や症状軽減を目指す治療法をレートコントロールといいます。
心房細動の原因となっている部分を、カテーテルを用いて心臓の内部から焼き切る治療法です。発作性心房細動では約90%が肺静脈由来の異常な電気興奮によって引き起こされる事が分かっており、肺静脈の出口を囲むように焼灼する肺静脈隔離術を行うことで、心房への異常興奮が遮断され、心房細動を抑制できます。
カテーテルアブレーションは、自覚症状を軽減させ、生活の質を向上させる効果があります。また、脳梗塞や心不全を予防し、生命予後を改善させる効果も期待されています。根治性の高い発作性心房細動の内に治療を行うことが理想ですが、持続性となっても2~3年以内の持続期間であれば成績は良好です。それ以上の持続期間でも、若い時から続いている方に有効の場合もあります。
心房細動になった場合、前述の治療を考えることは大事ですが、それ以外にもご自身の生活習慣を見直すことは、発症予防だけでなく治療の効果を最大限引き出すためにも大切です。
適切な治療で安心して生活できることをご理解いただき、心房細動に対する正確な知識を持ち、適切な治療と予防に努めましょう。そして、病気と上手に向き合い、ご自身の心臓を大切にすることが心房細動罹患者にとって最善の方法です。当院では、心房細動の診断・治療・予防に関する専門的な知識と経験を持つ医師が、お一人おひとりの状況に応じた最適な治療を提供しています。どのような疑問やご不安も、遠慮なくご相談ください。